
帯に「月10万円で暮らそう」とあるのに惹かれて買った。
広告代理店でかなりの高級取りの主人公が、突然退職して、実家を出て、ボロアパートで貯金を取り崩しながら、月に10万円で暮らすという。
引越しにあたり、大量の衣類や家具を処分する場面は、自分でも経験済みなので、身につまされた。
「梅雨時は、かび」「夏は、蚊」「冬は、凍える寒さ」と快適とは程遠いアパートで、それでもそれなりに暮らす。悲嘆することもなく、凡々と淡々と、ときに笑顔で暮らす様子は、まんざらでもない。同じアパートの住人や大家さんとの近すぎないけれど、冷たくない関係も悪くない。無職の時間のたっぷりある状態での散歩は、眺める街並みが違って見える。
たいした事件がおこるわけではないが、とても興味深く読めた。